風薫る5月の到来となりゴールデンウイークの真っ直中だが東北地方の被災者の方々のことを思うと行楽気分になどなれない。
♪林檎の花綻び、川面に霞み立ち…♫私の青春時代に歌声喫茶を風靡したロシア民謡“カチューシャ”の冒頭の一節だが、事務所の庭の林檎が東北の不幸も知らぬげに先月末より可愛い花を咲かせ始めた(^^)。梅や桃と違って林檎の花はピンクに特徴があって憶え易い。でも周囲の雑草が鬱蒼として見苦しいなあ。
うちの事務所では日頃職員達を安月給で扱き使っている罪滅ぼしに先月の土曜日から今週一杯を休みとして来るべきハードな3月決算に備えることにした。お正月休みを超える都合十日間の休みとなるが日本中が大災害の渦中となって居ることでもあり、搭乗口でTVカメラに捉まって放映でもされたら…と浮かれた海外旅行も気が引けるし、いっそ家族全員で東北地方へボランティア活動に行きたい気分だが、70代の老人2人と障碍者の伜とでは被災者の方々のお邪魔虫になるばかりだと諦め、何がしかの募金でもさせて頂こうかと考えたが、募金も果たしてちゃんと被災者の手許の届くのか甚だ疑わしく、ユニセフでさえ25%もテラ銭を取るのやから赤い羽根など後は推して知るべしだし何処でどう使われることやら思うと募金も考えてしまう。あれやこれや考えた挙げ句がこの連休は何処へも行かずにこの夏不足するとか謂われている野菜類の畑作りと庭の雑草退治に専念することとした(;;)。
先週日経新聞の“家計力向上ゼミ”なるコラムで震災による行方不明者の年金について触れられ、死亡推定の期間を通常は災害の日から1年とされる処を厚労省の英断で今回の東北の災害の場合3ヶ月に短縮され遺族厚生年金が請求できると書かれてあった。行方不明者の多くは津波によって命をなくされた方と思われ、遺体が発見される可能性は極めて少なく、死亡を何時に確定するのかとても困難であり、厚労省も善意での発想だと思われたが、ちょっと待って!津波で流された方は若い方ばかりでなく、65歳以上の厚生年金受給者も多く居られたと思う。例えば年金受給者のお父さんと年金加入者の子供の二人が津波に攫われたなら、残された遺族は死亡届を何時出したら良いのか考えてしまうだろう。子供の家族は早く遺族厚生年金が欲しいが、お父さんの事情を考えると死亡届を出すことでお父さんの厚生年金が30%程度カットされた遺族年金に変えられるし、若し配偶者が居なければ支給停止の運命となるから、ことは面倒であり多分死亡届の提出は少しも楽しくないことになりそうだ。最善の方法は1年間厚生年金をしっかりと受給して、お父さんの死亡届を1年ぎりぎりまで待って出し、子供の方の死亡届を特例で短縮された3ヶ月で出すことだが、死亡した事実は誰も確認できないことだし厚生労働省は文句を言えないのではないだろうか。コラムではお父さんのケースにまで言及して居なかったが充分あり得ることだと思った。斯くなることを慮った訳ではないだろうが我が国では同時死亡に関する法律がちゃんと定められているが、厚生労働省はアホだからその辺まで気付かないと思う。
話はがらりと法律論に変わるが交通事故などで親と子が死亡し、死んだ時刻が不明な場合は民法32条の2により“同時死亡の推定”が定められて居る。同時死亡では何故か両者間で相続が発生しないこととされるため子供が婚姻していた場合その配偶者の相続分が大きく異なってくる。つまり子供の配偶者は通常はお義父さんの財産が夫を通じて相続できるが、同時死亡とされる限り夫の財産は相続できても義父の財産には全く権利がなく、義母が存命なら義母と小舅小姑がそして義母が没後なら小舅小姑が全部取ることになる(;;)。普段義父の世話もしたことのない小舅小姑に財産を取られるのは耐えられないことだが“同時死亡の推定”の論理により斯くなることになる。お義父さんの財産が欲しければ1秒でも夫が長く生存していたことを立証するしかないがそれは不可能だ。義父は老齢だし夫の方が若いから少しでも長く息をして居たに違いないと叫んでも法律とは無情なものだ。子供でも産んでいれば代襲相続(親が死亡した場合子が親の権利を承継すること)によって孫に夫の取り分が救済されるが、代襲相続の権利は血の繋がりのない嫁にまで及ばないため、子なしだとなけなしの夫の財産だけを貰って泣く泣く実家に戻されることになるだろう(;;)。私は学生時代に民法と税理士試験に措ける相続税法の勉強をした際、民法の定めるこの“同時死亡の推定”には甚だ疑問があり、同時とは謂いながら結果的には当然に夫が得られたであろう権利を夫が先に亡くなった場合と同様な解釈に到るのはまるで合点が行かぬと考えたものだ。
私見だが同時死亡の場合高齢者が先に亡くなったものとする考え方の方が自然ではないだろうか。ものには順序があり、相続は財産を世代の上から下へ降ろして行くのが常識だろう。野球で同時はアウトかセーフかの議論があるが、世間の一般論として親は子供に財産を残したいのが心情であろうし、同時死亡はアウトで“遣らない”とする現行法の解釈には無理があると思うが諸兄はどう考えられるか。
親子で海外旅行する場合は親に遺言を書いて貰えとよく言われるが、それは上記のような事態を回避するために生活の知恵として知っておきたい。もっと確かな方法は嫁が義父の養子になっておくことであり、そうなれば法定血族となるから相続権は盤石だ。相続分も増えるし絶対に安心だと思う。もう一度言うが災害や事故で同時死亡などあり得ない。体の脆弱な者(高齢者)が先に息を引き取るのが当然ではないのか。法律で勝手に決めるな!
先週の常用漢字表外読みの答え
亡き父を偲ぶ(縁)とする (よすが)
今週の常用漢字表外読みの問題
(禍々しい)出来事