うちの事務所では年末調整の最終処理である各市町村へ提出する給与支払報告書の作成が完了し提出を待つばかりとなり、愈々24年度確定申告の作業に突入することとなった。何時まで経っても顧客に対して私でないと分からぬ情報が少なくなく、50日足らずの長丁場を果たして体力が続くのか案じられてならぬ。

てふてふ(蝶々) かは(川) いへ(家) かほ(顔)、何れも旧仮名遣いの言葉だが、どうして昔このような仮名遣いをして居たのか不思議でならぬと思っている方が世の中に多いと思う。
私もかねがね不思議に思って居たが、丸谷才一のエッセイにて日本人は江戸時代に入る迄は「H」の発音がなく全て「F」であり、蝶々のことを実際に「てふてふ」と呼んでおり、川は「かふぁ」→「かは」だったと書かれて居た。実際に使用している言葉を正確にその儘、仮名で表現したものだそうだ。タイムトラベルした訳じゃあるまいし、昔の人の発音など分かるものかと私は殆ど信じて居なかった。処が先日北原保雄 (明鏡国語辞典の編者)の書物を読んでいてアッと驚いた(゚ロ゚)/。1604年(徳川家康が征夷大将軍として江戸幕府を開府した翌年)に日葡辞典(日本語とポルトガル語)なるものが既に発行されて居たのだ、此は今も現存するが、その辞書には母→Faua母親→Fauavoyaと記述されて居り、「走る」はfaxiruだったのだ。此は室町末期のキリシタン資料に於いても立証できるそうだから真実だろう。
我が国自身の証拠としては、1516年に発行された「御奈良院御撰何曾(なぞ)」にて、『「母には二たびあいたれども父には一度もあはず」 くちびる』と謂う不思議ななぞなぞが載っているのが発見されている^^、此は当時の「はは」の音価が「Fawa」或いは「Fafa」であれば解ける謎であって、Fの発音には上下の唇の合体が必要なのがお分かりだろう。現在我々が使っている母「Haha」の発音では唇を用いない(両唇が合わない)ので「母に一度もあわず」となってしまうのだ^^。面白い処から言葉の発音が分かるもんだな、物凄い着眼力であり、貴重な「なぞなぞ」だったな^^。
因みに現在用いられている和英辞典では「ハヒフヘホ」は全て「H」で表記されているが、私が使用している三省堂コンサイス和英辞典(昭和27年発行)を見るとハ行の表記は「フ」のみ「F…」で表記され、フ以外は全て「H…」表記だ。然し我が国を代表する名峰富士は現在も「Fuji」であって決して「Huji」ではないが、50年の年月は何時の間にかFの発音を変えてしまったのだろう。「Huji」と書かれる日も遠くないと思われる。どうしてなら「フ…」で始まる言葉も現在では両唇を合わせずに尖らすだけで発音できるから昔の「フ」と現在の「フ」では発音が違ってきたのではないかしら:-)。
振り返って考えれば「F」に限らず日本語の発音が随分変わり何時とはなく歯切れの悪い低く「もちゃもちゃ」した言葉になって「マミムメモ」など微妙に変化してきたのに気付く、其れが証拠に衛星放送などで放映する戦後の昭和20年30年代の映画の声を聴いていると言葉の質が異なり、昔の女性は甲高く早口で歯切れ良く随分高い音階で喋っていた、今では男女共に同じオクターブになってしまったから女性の声のトーンが一昔前より1オクターブ位下がってきたのかも知れぬ。たった50年足らずで斯うなんだから400年も前なら字では読めても耳で聞いたら、誰もが今の日本人にまるで理解できぬ日本語を喋っていただろうし、現在の日本語表記で話し掛けても決して彼等に理解して貰えなかったろうな(;;)。
今の日本人は総じてFの発音ができないからフランス語を習うときスプーンを口の中に突っ込まれ口を噤んで喋らされるそうだが、安土桃山時代の人が見たら呆れてさぞ笑い転げたのではあるまいか^^。
Fの発音で思いだしたが東北弁の発音は独特だ、60年も前、学生時代ヒメマスの伝説に釣られて田沢湖を訪ねたことがある、当時は生保内線と謂うのがあって奥羽本線の大曲駅から田沢湖までの支線でありローカル線の見本のような長閑な旅だった。此の汽車の中で地元民だろう中年の女性達が余り口を開けないで唇の動きだけで話す会話を聞いた、然しチンプンカンプン単語の欠片すら全く理解できないのに此が日本語かと甚く驚いた。英語だったら単語の一つ位分かったろうに…と舌を巻いたのを憶えて居る。筆談でもしないとアカンのかなと思ったが、此方の言うことは分かって呉れるのだが返ってくる応答は全く理解できなかったのに参った:-)。
その東北弁だがどうしてあんな独特の発音になるのか、その理由について面白い説があり、激寒地であるため余り大きく口を開けないで発音するからあんな言葉になるのだと言う。その証拠に歴史的な例として大正期ロシア革命に対して行われたシベリア出兵では数多くの兵士達が肺炎で戦病死したが、東北の部隊から出兵した兵士にはこの肺炎が極端に少なかったと謂われている。余計に口を開きムダに空気を吸い込むから肺炎なんかになるんだとは彼等の主張だったそうだ。そうなんや、400年も昔は誰もが桁外れに貧しかったし寒かったから話し言葉だって省エネ型でお腹が減らないように口や唇の動きが最小限だったんだろうな:-)。

プラント大手日揮の従業員多数がアルジェリアでイスラム武装勢力に殺害され、更に味方であるべきアルジェリア軍の空爆で犠牲になった事件は誠に痛ましい限りだった:-)。
此の事件で日揮は犠牲者の一人が偶々現場に居合わせた元副社長であり襲撃は内部情報漏れも噂されているが此は偶然だろう、他の被害者の中には協力会社の従業員や更には派遣会社からの傭員だった、協力会社とは聞こえは良くても実質は穢(きたな)い仕事だけさせられる下請け孫請けの派遣傭員であり気の毒にも高齢者が多く福島原発同様何時もの悲しい構図だったな:-)。
誰もが不思議に思うのは政府が頑(かたくな)に被害者の氏名を公表しようとしなかったことだ、此は異例のことであり、恐らく理由は犠牲者が幾重もの下請け孫請け関係で日揮が一部被害者の氏名を知らなかったのだと思う。日揮が知らないものを政府が明かせる訳がない、口が裂けても「名前が分からん者が居る」などとは言えず、仕方なく政府も公表を控えて居たのだろう。
福島原発では東京電力が作業員一人当たりの日当を10万円払っているのに隙間に介在する下請けや派遣会社を装った魑魅魍魎が一杯居てピンハネし、作業員の手許に亘るときは僅か9分の1だったそうだから、日揮だって同じようなことだったのではなかろうか:-)。会社からではなく被害者の家族が名乗り出て氏名が明らかにされているのも不思議な現象だ。然し国外それも未開の地アフリカのことだから労災や健康保険などからの情報が全くなく、日本人の労務者かどうかの確認も大変だったのだろう。全く遣る瀬ない出来事だった(;;)。
日揮は国外のプラント工事が多いため余り知られない会社だが、売上高が年に5000億円以上もあり資本金230億円時価総額は建設土木124社でトップに位置する優れた会社だ。国内に敵なく技術力は世界一だから可成り政府寄りの企業と言って良いと思う。今回の事件で図らずも名前が知られ一躍全国版になった^^。アルジェの仕事はODAだしこの仕事を撤退した経済的な損失は全て政府が見てくれる(我々の税金で)、人が10人も殺されて先週末の株価終値48円高の2、627円と戻ったのは皮肉だったな:-)。週明けに少し買ってみよう^^。

先週の常用漢字の表外読みの答
彼は我々の(倫)だ、(たぐい)でした。(たぐい)は仲間や同僚のことです

今週の常用漢字の表外読みの問題
(刺)のない薔薇はない

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