税務調査その2 認定留保

4月も半ばを迎え、ソメイヨシノが咲き誇って居ますが、此の花は花期が短く、咲くと同時に散る準備を始めますから古来儚いものの代名詞として用いられます。此の桜が終わると最近では5月のゴールデンウイークを待たずに夏日が到来して我々を悩ませますが、昔は公平に住み分けていた春夏秋冬が何時とはなく歪(いびつ)となって夏の存在が大きくなり、間もなく冬が消え失せるのではないかと私は怖れて居ます🤬。

話を60年前に戻しましょう。当時の税務署の調査は小規模なお得意先であっても粗(ほぼ)3年に一回キチンと行われて居ましたが、現在のような事前通知などなく、必ず9時半位に署員が一人(大きい会社は二人)抜き打ちに来社して行われ、金庫や引き出しを開けさせられ脱税の証拠探しからのスタートでありました。金庫のお金を数えさせられては出納帳の残高と突合され、お金が多いと売上除外や!少ないと使い込みや!と追徴金の対象にされる大雑把で単純なものだったのです。納税者は誰も税金を誤魔化し、正しい帳簿など付けていないと謂う偏見があり、差し出した総勘定元帳など見られることは稀で、常に「現況調査が全て」と謂う雰囲気であり、そのため理不尽なことに何も戦利品が出ない場合でもお土産が必要であって、今と違い重加算税対象とされなかった翌期認容となって次の年の税金が減少する棚卸し在庫の計上漏れを幾らか差し出して居たのが慣例だったのです。処が個人事業でなく法人の場合には現況調査において何ら非違が見付からなくてお土産が出そうになく、心象が悪いと「認定や!」の一言が調査官から発せられ、調査官の眼の前に置かれ、うちの事務所が1年間苦心して作成した総勘定元帳を1ページも開けられることもなく、「何処かに隠し財産があることに認定」され理不尽な税金を取られることが通例でありました🤬。「認定」とは当時税務当局の課税権の乱用であって、何か解らぬが法人の所得申告に非違があると認められた場合でもその非違の内容が把握できない場合であって社長など経営陣が売上などを私的に遣いこんだ痕跡があれば、所謂往復ビンタである経費として認められない役員賞与として法人税と源泉所得税の両税が課せられますが、それでは会社側が到底納得しないので、変わる課税手段として多く用いられた方法が「認定留保」でありました。だから多くの法人には貸借対照表(バランスシート)には存在しませんが、法人税申告書の別表4(税務上の損益計算書)で「認定留保」として加算され、更正決定による課税されたものが別表5(税務上の貸借対照表)にて架空財産である「認定留保」として計上され未来永劫に消え去らないものとして存在して居りました(;;)。社長が身銭を切って会社に補填でもしないことには永久に記載される運命のものでありましたが、此れは課税庁が単に税金を徴するために便宜上設けたものであって実際には所在が怪しく、会社は唯単に「認定留保」なる隠し資産?に対する追徴税額を理由もなく支払わされているのが悲しい現実であったのです(;;)。結果として貸借対照表にも損益計算書にも記載のない架空の財産が「認定留保」のネーミングで法人税申告書に存在することになったのですが、その後日本経済も高度成長期に入って多くの中企業が成長を遂げ、証券取引所に上場する晴れの舞台に立とうとしましたが、東京証券取引所が上場審査を行う際に殆どの会社が税務申告書上にて「認定留保」と名付けられた財産を有していることが問題となリました🤬。証券取引所は認定留保とされた財産の帳簿受け入れを会社に迫りましたが、上場申請をするどの会社も「認定留保」の実態は課税庁の無理強いに依るものであって実態は全く存しないから「その額について身銭を切るつもりは全くなく、理由なら国税庁に聞いてくれ!」と突っ張ねたのです🤬。そこで困った証券取引所は止むなく国税庁に事実関係を問い合わせその詳細を詰めた結果、東証は「認定留保」が税務調査の結果として「申告是認はあり得ない」と言われた時代の産物であったため、税金を徴する最終手段に用いられた経緯を持つ怪しい財産であることに漸く確信を得たのでした(;;)。然し東京証券取引所も架空資産を抱えた会社の上場を認める訳にも行かず、国税庁に日参してことの経緯を糺した結果、遂に己が非を認めた国税庁が折れて日本中にある殆どの会社の別表5に鎮座している「認定留保」を消しても良いとの個別通達が発令され世の多くの会社から税務上のバランスシートである別表5の「認定留保」なるものが、ある日を以って突如消滅したのでありましたが、全ては時効が成立しているため認定留保に対し支払った税金が納税者に返されることは当然ながらありませんでした(;;)。お金を返さんでも良いから国税庁は「認定留保」の消去に「うん」と言ったんやろね🤬。来週に続く…、

 

先週の読めそうで読めない字     恐れ入り仕(つかまつ)る

今週の読めそうで読めない字    彼の身体を(動揺ぶる)