10月は1年の内で一番快適な月で、昔は10月の日差しを “亡き母親の掌(てのひら)の温(ぬく)もり”と譬えた言葉があったが、最近の10月はすっかり様変わりして夏の名残りを引き摺って居り、後半を待たないと此の温もりは感じられないのではないかと思ってしまう(;;)。
昨日の朝先週からTBSで始まった“サワコの朝”を見ていたら野村克也元監督がゲストで登場された。阿川佐和子さんが後1月足らずで58歳になられるとはとても思えぬ若々しさに唯々感心したが野村元監督の話は何時聞いても含蓄があって考えさせられ、嘗て10数年前だったかNHKラジオで1週間続けて彼自身の野球人生や人生観などが語られる時間があったが好評のため何度も再放送されたことを憶えている。司会慣れしない佐和子さんの辿々しい問い掛けにもヤンワリと受け止め役者の違いを見せつけられたが、一回り半の世代の違いは余りにも大きく、野村元監督の幼い頃の貧困生活や戦後美空ひばりの“悲しき口笛”を聞いて生きて行く希望を植え付けられた話など、昭和28年生まれ裕福な家庭でお嬢様育ちの佐和子さんにはどうにもピンと来ないようであり“徹子の部屋”ででも聞けば同世代の哀感が伝わったものをと思ったものだ(;;)。
私は野村元監督と同じ年だが、戦後に唄われた歌謡曲に対する私達世代の共感は戦前戦中を必死に生き抜いた人間にしか分からぬ何かがあり、激寒の年月を過ごしてこそ春の真の暖かさが感じられるのではないだろうか。
野村元監督の名言の一つに『大人は過去に縋(すが)り、子供は未来に逃げたがる』と謂うのがあるが、重い言葉であり、戦前戦中の辛かった過去があればこそ我々はその過去に縋って生きておれるのだろう、この言葉も前向きに考えればどうだろうか。辛い過去があったばかりに他人(ひと)が見れば苦しい現在の生活でも己には幸せであり燦めいて感じられるとしたら…(^^)。
それに反し、戦後生まれ暖衣飽食時代を過ごされた団塊の世代以降の方々にとってこの不況下縋るべき過去は泡沫(うたかた)の蜉蝣(かげろう)の如きものとなって居るが、自らの置かれた現在の境遇からして夢よもう一度と必死に縋ろうにも縋れない牴牾(もど)かしさは喩えようもないものだろうと思う。縋る過去にも二種類あるのも皮肉な話だが、人間は死ぬときには幸不幸併せて必ずプラスマイナスゼロになると謂われる俗諺は本当なのだなあ。
最近巷の景気は底なし沼のようで、景気に一番敏感に反応する業界がタクシーだと謂われているが、神戸のタクシー業界も規制緩和による増車と不景気による客離れで三宮から神戸辺りまで何処の街角も客待ち空車で一杯だから我々乗客は昔のようにタクシーにあぶれることもなく何処ででも車が待っていてラクチンだ。処が先日タクシーの運転手をしている知人と会話して居ての話だが、“ドアの開け閉めまでしてくれて料金の安いMKタクシーが最近見掛けなくなったけど…?”と彼に問うと、いや最近では運転手が礼儀正しくハイヤー気分で乗れるMKの人気が高まって乗車は電話予約だけで一杯、客の方で時間をずらす程であり、流しの余裕など全くないため街角では余り見掛けずMKの空車に当たった方は幸運だそうな…(;;)、基地は神戸に須磨に芦屋と3拠点あり数百台がフル稼働しているのを聞いて愕いた。最近ではトヨタのセンチュリーからハイブリット車まで導入してゴルフ場への送迎など大人気だそうだ。客にすればゴルフをフ終えた後のビールの一杯など堪えられないところだが、マイカーでは彼等を狙った帰路の交通検問が恐ろしく、MKでの往復2-4万円は4人で割れば如何程でもない。空港送迎など荷物の積み卸しからフライトまでのお見送りまで加わっているそうで外国人には英語のできる運転手がつくそうな…(^^)斯くまで細かいサ-ビスはMK独特のものであって他の業者の太刀打ちできるものではなくMKの一人勝ちとなって居るのだが、この一人勝ちの真の原因は極く些細なことであり、乗務員に乗客に対し下記の三つの言葉を掛けることを約束させ、一つでも忘れた場合は料金無料にすることだそうだ。
ご乗車有難うございます。MKの○○でございます。 
行き先は○○○までですね。
有難うございました。お忘れものはございませんか。
至極当たり前の言葉だが我々が利用するタクシーは大抵仏頂面で行き先を伝えても返事も返さず急発進する雲助が多いから、MKのドライバーが万人受けするのだろう(^^)。MKの隆盛を見るに付け、タクシー業界の衰退は全て彼等雲助自身が自分達で蒔いた種が実ってのものだったのではないだろうかと思ってしまう(;;)。
MK社長の青木定雄氏は北朝鮮出身の在日朝鮮人だそうで半生を運輸省(現国交省)の規制に刃向かって戦ってこられた方であり、アンチ官僚のスタイルは恰もヤマト運輸故小倉昌男氏を彷彿させる。彼の金日成の国にも斯くも立派な人が居ることを知り、その人の出生地で人種偏見を持つべきものでないことを思い知った。きっと朝鮮人が此までずっと日本人の半分の日当でしか使って貰えなかったことが彼を此処まで発憤させ成長させたものだろうな。
アップルのジョブスさんが若くして56歳で亡くなった。マイクロソフトのビルゲイツには僅かに及ばないだろうがアイパッドやアイフォンのヒットでアップル社を現在時価総額で世界一にまで押し上げたから彼の財産の額は桁外れではないだろうか、アメリカの相続税は毎年変わって流動的であり昨年は非課税で今年は100万ドルが基礎控除となって居るから彼が1年間延命したことが遺族にとって致命的だった(;;)。彼が若し日本人だったなら彼の財産を想像するに相続税額は来年度の税収を倍増させ日本の財政赤字の削減に寄与したのではなかったかと思う(;;)。
先週の常用漢字表外読みの答え
人の欠点を論う(あげつらう)でした
来週の常用漢字表外読みの問題
炉に(薪)を燻(く)べた。