今年のお正月は巷の景気と同様に暖かかったり寒くて雨が降ったりと憂鬱な年の明けでしたね。今日など午前中は小雪などちらついてメチャ寒くストーブが付いていないのかと思える程であり、戸外に出るのが億劫で一日中事務所に閉じ籠もりでした。{%gomenne%}
皆様のお正月は如何でしたか?私のお正月は昼食の買い物以外は何処にも行かずに午前中は今日もお得意先の決算を、午後は雑用の傍ら漢字の勉強で過ごしました。漢字も少し高度のレベルになると折角苦労した憶えた常用漢字体が仇となって再び50数年前旧字体の世界にタイムスリップを迫られ苦慮して居ります。
例えば常用漢字の“寿”という字は昔旧自体で“壽”と書いていましたよね。14画もあるので煩わしくて誰もが寿と書いていましたが、この字に扁を付けた“怒涛や祈祷”は準1級配当漢字であり旧字体共用で使えても、“躊躇の躊”は1級配当漢字のため寿の略字が使えません。{%tohoho_a%} 虐待の虐などもっと酷くて昔はEの真ん中の字が左に突き抜けていたのに今では旧字体まで消されてしまったために若い方はEが正字だと誤解をし、“諧謔の謔”など左に突き抜けていることに気付かずに解答し、正解にされずにウソー?と驚いて初めて正しい字を憶えることになります。
寿や虐など極く一端であり、常用漢字がその上位の字を学ぶ人達に及ぼす悪影響と弊害は量り知れぬことを漸く知るに至りました。
昨秋天寿を全うされた白川静先生が“アホな文部省が作った常用漢字が漢字をダメにした”と歎かれたのは立派な理由があります。それまでの漢字学者が紀元100年頃に後漢の学者がそれまでの漢字を体系化して著した“説文解字”を素に我が国でも我も我もとこの本を漢字の聖典として扱い、この本を只コピーしただけの学者が学者面をして威張っていたようです。処が夜間中学に通い独学で在野の白川先生が今から3200年前に殷王朝が占いに用いた亀の甲羅に刻んだ甲骨文字や青銅器に文字を鋳込んだ金文が漢字の始まりであり、“説文解字”には多くの誤りがあることを発見されてコピー学者達を痛烈に批判され、独力で甲骨文字や金文を解読されて新しい漢字学に金字塔を打ち立てられましたが、不勉強な似非学者達には全く面白くなく、自分達の砂上の楼閣を護るために白川先生は長く亜流として疎外視され学会の異端児扱いされていましたが、先生が齢73歳(私より年長だ!)にして筆を取られ86歳にして完成され発表された三部作”字統“ ”字訓“ ”字通“は世に漢字ブームを惹き起こし、似非漢字学者達も先生の功績を認めないことには己が立場が危うくなるために巳むなく迎合し、先生は88歳にして文化功労賞94歳にしての文化勲章を受賞されたことは日本記録だと思いますが、如何に先生がそれまで文部省や学会主流派から無視され冷遇されていたかが良く分かります。先生が述べられた”学問は借り物ではできません。どなたでも独学になる筈です“の一言は”逆風に向かって飛べ“の言葉と共に世の学者と謂われる人達の99.9%には全く以て耳の痛い言葉であったことでしょうね。{%warai_a%}
先生が書かれる甲骨文字は“人”という字が人の姿からできたもの位のことは私程度にでも分かりますが、犬と謂う字の右肩の点が犬の尻尾か耳を示しているとは誰も少しも気付きませんよね。先生が監修された小山鉄郎著“白川静さんに学ぶ漢字は楽しい”に拠れば、太古、犬は神への生け贄として特に尊いものであり、20世紀に行われた殷王朝の遺跡の発掘調査では地中深く掘られた陵墓の中央に玄室があり正装した武人と犬が埋められていたそうです。又別の穴にも武人と犬が埋められて居り、先生は犬は悪い者を祓う呪禁のためのものであって地中から忍び寄ってくる悪い虫を防ぐために嗅覚の鋭い犬を埋めて護らせたのではないかと推理されています。

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これは白川先生の三部作“字統”の一部です。犬だってこうまで書いて頂くと本望でしょうね。人と一緒に生け贄になった甲斐があると謂うものですが、紀元前太古の昔を想像しながら86歳までの13年間を日夜漢字を温ねて学ばれた先生には全く頭が下がる思いです。
人と犬の結合した“伏”という字がありますが、その字の持つ意味もこの辞書を読むと我々ド素人にもお墓で横たわって眠っている人と犬であることがよく分かりますよね。
処が先生が戦前から甲骨文字や金文と挌闘されていた底辺での苦労も知らずに能天気な文部省と似非学者達は戦後常用漢字なる簡易な字を作りましたが、そのお陰で我々世代の人間が学業で習った旧字体の漢字とその後社会人になってから使われだした常用漢字との乖離に如何に悩まされたことか!(私は漢検2級の試験で“暁”の旁を旧字体“堯”と書いて罰点でした(;;)。この字の源は山が高きことを意味していますから土でなければならず十では意味が通りませんよね。常用漢字が漢字本来の持つ意味を失わせた罪は誠に大きいと白川先生は大いに歎かれたそうですが、私もさもありなんと同感です。字は簡単にすれば良いと謂うものではなく、その字の本来持つ意味を失っては何もなりません。“臭”や “戻”になると文部省の鼻息で犬の肩の点が飛ばされて居なくなっており、本来の犬の意味が失われてしまいました。犬は嗅覚が鋭いので鼻を意味する“自”と犬を合わせて“におい”の意となり“臭い”となったのですが、鼻が大きいでは”臭い“と共通する部分が全く失われていますよね。”戻“だって同じように家の入口に生け贄の犬を埋めて地中の悪霊を祓うために悪霊の退散を”戻る”と謂ったものであり、因みに“大”は人が両手を広げている様であり”臭“ ”戻”共に意味をなしません。此に類するものは数えきれずあり枚挙に遑がありませんが、白川先生の功績はこのことだったのか!と浅学非才の私めも“字統”を紐解いた最近になり朧気乍ら気付いたのでありました。{%naku_a%}
先生は生前漢字はもとより甲骨文でも金文でもその字の成り立ちから学ばれたためにどんなに難しい漢字でもすらすらと書かれるのに常用漢字になると決まって手が止まったそうですよ。まるでハングル文字でを見るが如き奇異な思いだったのではないでしょうか。{%naku_a%}
昨年来自動車保険、医療保険と損保業界が加入者騙しの手口の発覚の連続で各社共に金融庁と加入者の中挾みにあって苦境に立たされていますが自業自得でありましょう。全ては契約書の約款が読む気がしない程晦渋であり、加入者も販売員の説明だけ聞いて信用し、録音テープなど撮って居る訳でもないので後になって“言った”“言わない”の水掛け論となり、ご老公の印籠ならぬ約款の登場で契約者がすごすご引き下がり損保の一人勝ちが続くケースばかりでありました。処が最近では加入者も少しは警戒して約款などを読むようになったので困った保険会社は医療保険のトラブルに対し遂に社内規定なる伝家の宝刀を抜いたと年末の新聞に報道されていました。その事件は入院給付金についてのトラブルでありましたが、子供が病気治療で約2ケ月入院し、その後1ケ月以上経った後も2-3日の短期入院を繰り返したそうですが、約款では『再入院した場合、会社が認めた場合は最初の入院と再入院を継続した1回の入院とみなす』と書いてあったため再入院の保険金を請求したら保険会社は“再入院とは退院から再入院まで1ケ月以内を謂う”なる社内規定を持ち出して支払いを拒絶し、別の病気で入院した訳であるまいし、それならそのことをどうして約款に書かないのかと加入者が激高し事件は泥沼化しています。損保もいじましいことをしますよね。
又、25年前に加入した医療保険のケースでは昨年前立腺ガンが見付かったために新しい放射線治療法を受けて医療保険を請求したら、25年前にはなかった治療法だから手術とは認めず保険金は支払えないと拒絶されたケースなどは、支払いを契約当時の手術=メス(執刀)の概念に固執したものであり、近年ではメスを使わなくても内視鏡で切取ったり、放射線で焼き切っても手術に違いないと私は考えますが、保険会社も手術の定義で争うと負けそうなので契約当時の医療技術に限ると苦しい答弁に進路変更するなどまるで詐話師であり詐欺同然ですよね。
皆様も保険はあくまで魔除けであり、よもや保険金など貰うつもりで保険加入などしないようにしましょうね。{%naku_a%}
喪明けのため新春のご挨拶ができませんが、どうか今年も昨年同様宜敷くお願い致します。
このブログも何時までもお見忘れなく…。{%ureshii%}