招きもしないのに突如阪神淡路間を訪れ多くの傷跡を残して去って行ったあの悪夢のような大震災が未だ昨日のことのように想い出されますが、丁度大震災の1ケ月前に誕生した孫が今ではもう中学一年生の3学期ですからから早や13年も経過したことを実感しない訳には行きません。
今年も大震災で肉親を失った方々にとっては祥月命日に当たる17日には被災各地区で追悼の鎮魂式(レクイエム)が催されて居ましたが、何時も想い出されるのが大震災の翌年である平成7年1月17日に偶々仕事で芦屋の関与先を訪れた折、業平橋南西地区から二号線を跨いで現在のJR甲南山手駅付近付近にかけて、焼け野原のあちこちに無数に手向けられた花束を見て、犠牲者の多きに驚くと共に、此の世の創造主の如くに威張っている人間が、大自然の力の前に如何に脆く無力な存在であるかを知り、所詮人間は根源的な無明と言ってよい孤独の闇に生かされていることも改めて知らされたのでありました。{%orz_a%}
今日は上記芦屋のお得意先であるNさんから先週仕事のメールのお供をして送られてきた白梅の花を先週の万両に続いてご紹介しましょう。梅の開花は普通2月になってからですがこれも温暖化のせいでしょうか{%gakkari%}

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白梅と謂えば湯島天神ですが“湯島天神と謂えば懐かしい婦系図(おんなけいず)”のお蔦と早瀬主税の別れの情景が想い出されます。あのとき月の光に白梅が浮き出たとき『切れるの別れるのって、そんなことは芸者のときに言う言葉、私にはいっそ死ねと言って下さい』お蔦のあの有名な名セリフに泣かされたのは何時のことだったでしょうか。現代の女性なら素人娘でも “手切れ金はなんぼ出せんねん!”と男に詰め寄り、気の弱い男性をオロオロさせることでしょうね。{%saiaku%}婦系図(泉鏡花作)は徳冨蘆花作の武夫と浪子の不如帰(ほととぎす)、尾崎紅葉作の貫一お宮の金色夜叉(こんじきやしゃ)と併せて明治時代を代表する三代通俗小説と呼ばれましたが、今の通俗小説と違って昔は読者が帝大出の知識層辺りに多かったせいか、格調が高く現在の純文学より遙かに高度なものであり、只男女間の“ものの哀れ”を主題としているばかりに通俗小説と呼ばれていたようです。この時代は文語体が国語教育の基礎であったために泉鏡花の作品も初期の作品は文語体でしたからその後口語体に転じても、五七五調でフレーズが韻を踏んでいて歯切れのよい文章です。私には難解な漢字熟語の勉強にもなり今も愛読書の中に入っています。{%tyoki%}皆様も未だだったら“高野聖”など一度読まれたら如何ですか。今流行(はやり)のあやかし物の趨りのようですが、今流行(はやり)の畑中恵“しゃばけ”などとは違って格調が高く、読者を全く違った世界に誘(いざな)ってくれる神秘と驚異の物語にきっと驚かれることでしょう。{%ureshii%}
脱線した話を元に戻しましょう、お得意先である芦屋のNさんは大震災で自宅兼本社が全壊となり、翌年建て替えられましたが平成14年には芦屋市から強制的に区画整理(それまでの4mの道路を6mに拡幅)の対象となり、再度取り壊しとなって{%komaru%}翌年建て替えとなりましたが、私より3歳も年長の方にとって5年間に2度の建て替えは莫大なエネルギーを要し更に生活様式の変化による精神的なダメージも大きく、大震災後手を拱(こまぬ)いていた芦屋市の朝令暮改が腹立たしく思われてなりません。区画整理をするなら大震災直後焼け野原になって何処が道やら人家の後やら分からぬ時にどうしてできなかったものでしょうか。これぞ税金の無駄遣いの標本のようなものであり、儲けたのは建築業者と道路工事業者だけでありました。{%ikari%}{%ikari%}
ともあれ、築後三年漸くお庭も昔の佇まいを取り戻し、草木やコオロギ達も帰ってきて四季の草花が色取り取りに咲き誇るようになり、Nさん宅に時折仕事でお伺いするのが季節の楽しみとなって居ります。{%spring%}
常用漢字の見直しを進めている文部科学省文化審議会国語分科会漢字小委員会(舌を噛みそうな何とも長い名前ですが何とかならんのか!)では現行の常用漢字に含まれていない11字を新たに常用漢字に追加することになり、2010年度より実施するそうです。新常用漢字11字は鹿、阪、奈、岡、熊、梨、阜、埼、茨、栃、媛、となっていますが、奇妙な共通点にお気付きでしょうね。そうです全て我が国の府県名の内常用漢字に入れられてなかった字が今回追加されることになりました。常用漢字は学習漢字を含んで中学3年生の義務教育期間までに教えられる漢字ですが、中学校を卒業しても自分の住む県の名前すら教えられていないのではマズイのではないかと謂う処が遅蒔きながら発想の原点と見ました。
処が埼玉の埼は現在準1級の配当漢字ですが音読みが“き”で訓読みは“さき”ですから困りましたね。漢字小委員会では無理矢理訓読みに“さい”を入れるつもりでしょうか?{%tohoho_a%}
常用漢字は今から27年前1981年に制定されて現在に至って居ますが、その出所はそれまで使用されていた当用漢字や教育漢字から移行してきたものと思われ、当時既に殆ど使用されていない漢字や難解な漢字が多数含まれていることから常用漢字が当時の文部省の役人によって充分に精査されることなく第二次世界大戦当時に使用されていた漢字が当用漢字を経由してフリーパスで常用漢字にされたものと思われ法案に盲判を押した文部省役人の怠慢にも驚きますが、民間の有識者も傲慢な役人の前では一言も言えなかったは不甲斐なかったと思いますよ。
例えば陛、爵、璽、詔、勅、謁、閲、慶、陵、など天皇に関する用語と思われ、獄、拷、脅、嚇、虐、虜、などまるで監獄用語ではありませんか。逓、など昔郵政省のことを逓信省と言っていたための用語であり、現在では逓減とか逓増に使われる位で死語に近い字となっています。小委員会はこれら現在使われなくなった漢字と画数の多い繊、遷、薦、繭、髄、麗、などを常用漢字から追放して準一級に格上げすれば漢検2級の合格率が現在の25%から50%に上昇することに違いありません。
小委員会では引き続き約4000の漢字(現在の準1級迄の漢字3000字に1級の漢字を1000字加える)を書籍や新聞で使用頻度を順位付けして上位の漢字を新しい常用漢字と定め下位は個別に検討し、更に読めるだけでよい“準常用漢字表”の制定をも検討するそうですが、書けなくても良い常用漢字なんて可笑しなものであり、実施するとなればセンター試験は言うに及ばず、中学受験、高校受験にも影響が大きく長いスパンで見ないことには、どうかすると浪人に不利になる可能性が大となりますがその辺を愚かな役人達はどう考えているのでしょうか。
高級料亭とは表向き実は偽装のデパートであったあの悪名高い船場吉兆が民事再生法による再建を目指し、この22日から営業を再開することとなりましたが、僅か5名のパート従業員が労働組合を作り、ボンボンでお飾りであった長男に変わって新社長に就任した湯木佐知子女将に造反し、“湯木一族が会社に残る限り体質改善は望めない”と新社長の退陣を強く求めております。幹部社員達も容赦のないリストラで退職を余儀なくされ、残された低賃金のパート達5名だけが失うものは何もないと立ち上がったものですが。この女将謝罪会見の折社長である隣の息子に小声で謝罪の入れ智慧をしてメディアの失笑を誘うなど役職は兎も角、従来から実質的な経営者であったものと思われ、お客に向けた笑顔が振り向けば従業員に対する閻魔顔となる所謂典型的な搾取型の見本のような人だったことが今回のパート従業員の造反となったものでしょう。例え偽装事件があっても経営者が従業員を庇い、上に立つ者として全ての罪を被っていれば此処まで事態は悪化しなかったと思われますが、それすらできずに従業員の心を繋ぎ止めることができなかった経営者など経営者としての資格が全くありません。本来なら会社更生法を適用したかったことでしょうが、兄弟は他人とばかりに同業吉兆にソッポを向かれてスポンサーとなる者がなくて、仕方なしの民事再生法申請でありましたが前途は多難でありこの会社の行く末は三途の川と見ました。{%shiranai%}
立派な会社の経営者は口を揃えてこう言っているではありませんか。
“うちの会社の財産は機械でも技術でもないうちの従業員や”
吉兆の女将聞いているのか!
先週の答え
 幼気ない(いとけない)
読めるようで読めない字ですよね。“幼い”は誰が読んでも“おさない”ですが常用漢字の表外読みでは“いとけない”と読みます。然しそれでは“おさない”か“いとけない”は判読できないところから幼の後ろに“気”をくっつけて“いとけない”と読むようになりました。準1級でよく出される言葉です。送りがなの異なる“幼気な”と謂う言葉もありますが、こちらは“いたいけな”と読みます。{%warai_a%}又、幼稚の“稚”という字に送りがなの“い”をくっつけても“いとけない”と読みます、勿論此も常用漢字の表外読みとなっています。
前回の漢検試験で私に解けなかった常用漢字は“尚ぶ”の仮名付けでした。勿論表外読みなんですが正解は“たっとぶ”だったのです。{%gakkari%}常用漢字と謂ってもバカにできず結構難しいですね。
“漏洩”という熟語は機密などが漏れることを謂い“ろうえい”若しくは“ろうせつ”と読みますが同じ意味でも”洩漏“は”せつろう“の一本読みですから熟語って難しいですね。
今週の漢字の問題
“雪袴”
読み方とその意味をお答え下さい。勿論“ゆきばかま”では正解ではありませんよ。{%ureshii%}