確定申告の最盛期を控えて春一番が到来して漸く冬らしくなって参りました。早朝庭に出て吐く息の白さに身が引き締まり冬を実感しています。お陰で永かった風邪も少しマシになってきたような気がしています。{%ureshii%}
先週の月曜日当て逃げされた漁船の3人が浸水するボートで漂流中を無事3日振りに救助された心温かい記事のすぐ隣に載っていたのは、東京東武線で自殺しようとした女性を助けようとして電車に刎ねられ重体だった板橋署のお巡りさんが多くの住民から恢復を祈られながらその甲斐もなく亡くなられた悲しくも痛ましくニュースでありました。最近は裏金作りに精を出す税金泥棒のようなお巡りさんや、交通違反車を追い詰めて自損事故に追い込む悪徳パトカーばかりかと思ったら、昔ながらの地域型お巡りさんが未だ居られたことを知ってホットされた方が多かったと思います。このお巡りさんは立身出世には関心のない方らしく、入庁30年にして巡査部長(兵隊さんで謂えば1等兵)ですから、給与も安く親子3人生活も楽ではなかったでしょう。下賤な私などが考えることは、一般論的な話としてこの方は家で奥さんに昇進試験の結果を聞かれては絶えず“甲斐性なし!”と罵られていたのではなかったかと思います。然し警察官の為すべきことは昇進試験に受かって出世することなどではなく、何より一番に求められることは善良な市民が安心して生活できる暮らしを守ることに尽きますからこの交番の付近の住民にとってはこのお巡りさんの存在は本当に有難かったでしょうね。寒い夜も雨の夜も交番の前で仁王立ちし帰宅する住民を見守ってくれていたそうです。涙をそそったのは事故現場に手向けられた花に添えてあった近所の子供からと思えるたどたどしい哀悼の辞『自転車を直していただきありがとうございました。天国で楽しくくらしてください。○○より』(原文の儘)でしたから、このお巡りさんは周囲の住民に溶け込み愛された勤務生活を送って居られたことでしょう。うちの近くの交番など何時覗いても留守でお巡りさんが居た例しがなく、警邏に出ているにしては近くの常時不法駐車もついぞチョークが曳かれた形跡もなく何のための交番やら分かりませんが、皆様もきっと思い当たる節が沢山お有りでしょう。{%gakkari%}
このお巡りさん自殺願望女性の謂わば巻き添え貰い事故ですから犬死も同然ですが、命を賭しての行動は賞讃に値するものであり、犯人に立ち向かい相手を射殺することなどより、此が真の勇気と謂うものではないでしょうか。亡くなられた夜、遺体は板橋警察署に安置され安倍総理や警視総監の弔問を受けるなどVIP扱いの名誉であり、兇悪犯人を射殺しても精々警視総監賞ですから、このお巡りさんの人生は不幸な終焉に終わりましたが、それは何も分からぬ手合いが考えることであり、安倍総理がこのお巡りさんの勇気に対し緊急叙勲の意向を発表しましたから奥様も最早ご亭主を“甲斐性なし”呼ばわりはできず、それ処かこのお巡りさんは二階級特進による号俸アップで退職金は大幅増となりますし、遺族年金も格段の相違となりましょうから結果的に奥様に感謝されることとなりこのお巡りさん仏壇内ではありますが家庭が漸く安住の地となり仕合わせであったと思います。全ては永年に亘る地道な地域社会への無欲の奉仕が齋らしたものであったでしょう。大きな役所の大きな部屋でふんぞり返って部下を顎で使うだけしか能がない一種試験合格の高級官僚の連中には逆立ちしても出来ぬ行動であり、我が國の治安は斯うした底辺の警察官の弛まぬ努力により保たれていることを改めて再認識致しました。葬儀に際し奥さんは『夫の行動を誇りに思います』と挨拶されたそうですが、このお巡りさん奥さんにそんな風に言って貰って嬉しかったでしょうね。{%uttori%}
強い奥さんとできの悪い子供達に囲まれて針の筵(むしろ)の毎日を過ごしている世の多くの男性にとっては“儂にも殉死の機会はないものか”と羨まれますよね。{%tohoho_a%} 合掌
先週の答え 『骸骨(がいこつ)を乞う』
こんな言葉を聞かれたことはありませんよね。“骸骨”と“乞う”が上手く結びつきませんね。誰に聞いても“何のこっちゃ?”と相手にされません。実はこの言葉も準一級に出題される“故事、格言、諺”の中の一つであり、答から申し上げましょう。昔主君に対して家臣が暇(いとま)を告げるときに用いた言葉であり、司馬遷の『史記』に「登場します。どうして骸骨なの?その理由なるものは、“夫婦は二世、主従は三世”などと昔から良く謂われましたが、家臣は主君に対して身も心も全てを捧げたものであり、自分のものなど何もないから、心身共に燃焼し尽くし身を退くに際し、蝉ならばせめて抜け殻だけでも返して貰えぬだろうかと謂うことを骸骨に譬えて表現したものです。“貞女は両夫に見(まみ)えず” “忠臣は二君に事(つか)えず”と謂いますが、何とも凄まじい奉仕ぶりには世のサラリーマン達にも爪の垢を煎じて呑ませてやりたいですね。矢沢栄一著“知らない日本語”に拠ればこの言葉が中国から日本に渡来してから江戸時代に良く用いられ、松平伊豆守信綱など徳川家で老中30年徳川家光家綱に仕えて幕府の基礎を堅め辞職の直後死去したそうですから将軍達に血肉を捧げ付くし文字通り骨だけになったのでしょう。今時こんな人はお上のお役人では先ず見られなくなりましたが、会社勤め一筋の真面目人間には稀に老後の楽しみであった家族の団欒が叶わぬために定年と共に“生ける屍”となり、人生の目標を失った挙げ句に認知症となる方が少なからず見られますが、時代が時代ですから身内の誰にも面倒すら見て貰える訳がなく、精神病院で徘徊を恐れてベッドに手鎖の後はヘルパさんと介護保険任せがオチあり、奥様はご主人の退職金と年金でボーイフレンドと温泉旅行ではこの方は死んでも死にきれず、この人の人生って一体何だったのかと思ってしまいます。そう考えれば踏切で殉職されたお巡りさんなど仕合わせだったと謂うべきでしょうね。
理不尽にも今の世では昔は男の鏡とされた『骸骨を乞う』型人間は、自己中心の女性が多くなったお陰で夫を支える良き伴侶に恵まれる機会が殆どなくなったために不幸な老後を送ることとなり、反って所謂“5時から男”が老後も世を跋扈できる不思議な時代となりました。
昔我々が憧れて居た日本女性は、楚々として可憐で常に主人に対して貞淑であり主人の帰宅時には玄関で着物の裾をきちんと併せて正座し、三つ指突いて“お帰りなさいませ”と挨拶をする、所謂山本周五郎著“日本婦道記”に登場する手弱女(たおやめ)であり、又現実でもその通りでありましたが、何時とはなく着物も三つ指も映画か小説の世界に逃避して行き、帰宅しても返事もなくTVの前から馬鹿笑いが聞こえるのが通例となりましたから世の中変わりましたね。昔作家の舟橋聖一は帰宅したとき父と母に玄関で三つ指突いて礼をさせ、“お帰りなさいませ”と言わせたそうですよ。喰わせて遣っているのは倅の自分だぞ!と謂う意味を分からせるためにさせたことでしょうが、これって戦前派の人間でしか理解できないことでしょうね。
処で、皆様は“三つ指を突く”ってご存じですか?“指を三本つくんやろ”“そうですが然らば何指ですか?” ”…?” 正解は親指人差し指そして中指であり薬指と小指は後ろに曲げて隠していたものです。{%warai_a%}
このブログって勉強になるなあ!(笑)
“骸骨を乞う”の言葉の意味を知れば、現代社会なら企業の長たる社長、若しくはお役所の首長が泣いて歓びそうな言葉ですが、今や職場や上司に対し身も心も…なんて時代ではなく、会社も役所も“遊びが第一、家庭は第二、三四がなくて五に仕事”が常識となっていますから、こんな素晴らしい言葉にも誰も少しも共感しなくなりましたが、良く考えてみると、これって現代なら鉄砲玉や身代わり出頭が慣わしのヤクザの世界のような話ですから、昔の武士達は誰もが主君に命を捧げて生きていたのは偉かったですよね。年金と退職金の計算にだけ聡くて上司などゴマスリだけして居れば仕事などどうでも良い我が国の殆どのお役人達はヤクザ以下であり、元々から中身は空っぽで、始めから骸骨だけでしかなかったのではないでしょうか。{%komaru%}
今週の問題
『(じそん)のために美田を買わず』
(  )内に漢字を入れてその意味を答えて下さい。