昨年、ご報告したとおりコンピュータソフトとインターネットにより長期にわたり網羅的に馬券を購入して多額の利益を得ている場合、外れ馬券購入費用も必要経費と認め払戻金を雑所得とすると、国税庁は所得税法基本通達34-1を改正した。
ところが4月21日新たに、コンピューターソフトを使用せず独自のノウハウで購入した払戻金も雑所得として、外れ馬券を含む馬券購入代金の全体が必要経費として控除されるという判断を東京高等裁判所が下した。
この納税者は6年間で72億円の馬券を購入し5億円の利益を上げていた。
実に高い回収率を誇っており、独自のノウハウによりこのような馬券を購入したことは、先にコンピュータソフトを用いた最高裁判決の納税者の馬券購入方法と何ら本質的に異なるところはないと判断したのである。
つまりコンピュータソフトを使うことが雑所得の要件ではなくて、独自のノウハウを使っていることが要件だったのだ。
それを甘い判断で基本通達を表面的に修正しただけで済ませてしまったのが、今回の高裁での敗因である。
おそらく今回も基本通達を改正しなければならないだろう。
私は従来、重要な通達改正を国税庁内部の密室談義でなく、有識者を交えた第三者委員会に任せたら如何と考えている。
現状は税法の条文がひときわ難解だったり、通達改正に関する議論が尽くされていない。
今回の高裁判断が問題提起になれば良いと思われる。