あっという間に季節が流れ、あと半月で暦は丑年に代わります。思えば私自身よくぞこの歳まで大病もせずに無事働いて来られたものだと感慨無量の思いです。然しそんな感傷に浸っている間もなく現在も日夜恒例である年末調整の準備作業や10月決算事務に追われていますが、最近になって仕事が終って職員が帰った後、何故か無性に幼い頃を懐古することが多くなりました。想い出すのは決まって小学や中学で教わった唱歌であり、これも加齢による“子供返り”の傾向がでてきたのではないかと思います。タイムスリップして本当に子供に帰れるなら此程嬉しいことはないのですが…(;;)
“子供返り”した私でも通販のCDを買うほどの熱意もないので、先日ご紹介したネットの“YouTube”で子供の頃の唱歌を検索しては聴いていますが、時の流れは歌の題名にまで及び“旅愁”を聞いてみようと検索したら“更けゆく秋の夜…”ではなく、西崎みどり唱うところの“旅愁”(必殺仕掛人主題歌)が出てきて此は此で懐かしく久し振りで幼く可愛いみどりちゃんを拝見して愕きました。 “故郷”で検索すると“兎追いし…”ではなく、吉幾三の演歌が出てきたりしますから著作権は歌の題名にまで及ばないのかも知れませんね。
西崎みどりの“旅愁”は今から34年前に必殺仕掛人に出演して14歳で主題歌を歌った彼女唯一のヒット曲ですが、 “you tube”上ではその後此の歌を歌った石川さゆりからテレサ.テンに最近では田川寿美などなど登場しますから、とても良い曲だったことが分かります。彼女は3歳にして日舞で初舞台を踏み5歳で西崎流宗家の家元となった異色の人であって、現在も西崎流新宗家の家元として活躍中だそうです。きっと日舞の舞台では最後に“旅愁”が歌われるのではないでしょうか。日舞のファンより歌のファンの方が多かったりして…(^^)
【旅愁】
木枯らしの季節を迎えたことだし大好きな小学唱歌でも聴けたらいいなと先日土曜日の昼下がりに仕事の傍らNHKラジオを聞いて居ましたら、とても懐かしい曲が流れているのに巡り逢いましたが、良く聞いていると私が憶えていた曲とは歌詞が全く異なって居たのに愕いたのです。此の歌は小学校の終り頃か中学校の始めだったと思いますが『他郷の月』の題名で習った、音律が短調のとても悲しい曲であり、音痴の私でもその頃の己の身の上を憂いて此の曲に共感し、誰も聞いて居ないときに一人でよく歌った歌でありましたが、NHKの放送では題名も『冬の星座』と聞いたことがあっても歌詞が私の記憶とは全く異なっており、曲は同じでも歌詞の感触は前者が故郷への郷愁を唱った悲しい曲であるのに反し、後者は文字通り星を鏤(ちりば)めたような美しい旋律の叙情歌でありましたから不思議に思ってネットで調べてみたら、作曲者はアメリカ人のヘイズと云う人であり、作詞は『他郷の月』が国文学者の中村秋香で、『冬の星座』は、かの有名な堀内敬三さんでした。
【冬の星座】
大昔のことで恐縮ですが堀内敬三さんと謂えばNHKのラジオ番組“話の泉”で日本中に碩学で名を轟かせた方です。高橋圭三アナの司会で終戦後18年も続いたクイズバラエティーの趨(はし)りと謂うべき長寿番組であり徳川夢声、サトウハチロウ、渡邉紳一郎などのレギュラー陣の博学を超えた雑学知識の広さには私など唯唯驚嘆したものでありました。氏は本職は音楽評論家でありましたが、その実マサチュセッツ工科大学出の修士であって工学部の出身ですから音楽評論家とは華麗なる転身でありましたが、その辺りが該博の所以であったのでしょう。
話は違うところに飛んでしまったので元に戻しましょう。『他郷の月』が国文学者の作とあっては格調の高さも宜(むべ)なるかなでありましたが、中村秋香は天保の生まれで明治の終りに没して居られ、作曲者のヘイズも同じ頃に亡くなって居られますからこの曲が明治時代の作品であることが分かります。他郷と謂う聞き慣れない言葉は故郷の反語だと思いますが、それだけに遠く離れた故郷が夢にまで見る懐かしい処であることがしみじみと実感できますね。その頃の日本は日清戦争や日露戦争と国力を費やして疲弊し切った貧しい時代でありましたから子供達は女工哀史や丁稚奉公などマシなほうで親の薬代を支払うために女衒(ぜげん)に売られ苦界に身を沈めた幼(いとけな)い少女など数知れずありましたから、己が運命(さだめ)を皆家族の幸せに託して懸命に働き、住む場所は異なっても全員心を寄せ合って生きていた望郷の思いが此の歌に託されて居たのではないでしょうか。
今年アフガンで現地の難民達を助けるべく彼等の心に融け込んでいたボランティアの一青年浜田和也さんがその志し半ばにして殺害され無念の死を遂げられましたが、彼は日本とは遠く離れていても心は何時も家族と一つ“他郷の月”の心境であったろうかと思いました。
若い方は“冬の星座”のメロディーで “他郷の月”を口遊(ずさ)で見て下さい。きっと切々とした哀愁のメロディーから、生活は豊かでも共に暮らしていても、心が離れ離れになっている自分本位の現代の家族の有り姿を振り返らざるを得ないのに慄然とされる方が多く居られるのではないでしょうか。(;;)
昔は偉い学者でも威張らず踏ん反り返らずに童謡や小学唱歌などを多く作詞し良い歌詞が溢れていましたね。♪兎追いし かの山 小鮒釣りし かの川♪と小学唱歌“故郷”を作詞したのも著名な国文学者高野辰之でした。彼の代表作“春の小川”が戦後文部省の阿呆な役人の手によって♪春の小川はさらさら流る♪が“さらさら行くよ”と漫才師擬きに改竄(かいざん)されましたが、信州千曲川の辺(ほとり)の高野辰之記念館の碑には今もしっかりと“さらさら流る”と刻んであるそうですよ。(^^)
愛娘への父親の愛情を利用して誘拐された友梨ちゃんを助けてあげると近づきこの4年間に7千万円もの大金を幾度かに亘って騙し取っていた中年の男女2名が先日大阪府警に逮捕されました。騙された父親にも落ち度がなかったとは言えませんが、藁にも縋りたい親の傷心を利用して巨額な金銭を騙し取り、散財生活に明け暮れた悪辣な犯行は最近類を見ない非道なものであり、此の男女二人は此まで一体どんな屈折した人生を送って来たのでしょうか、良心と謂うものを全く持ち合わせない極悪人だと思いました。
この二人は現在友梨ちゃんの殺害を含めて警察から手厳しく糺弾されていることでしょうが自業自得であり、悪銭身につかず7千万円もみんな夢の中では警察だって怒りますよね。詐欺罪だけでなくもっと過酷な刑罰を科することができるように検察当局と掛け合って頂きたいと思います。
然し元はと謂えば数少ないNPOの方々の捜索だけではどうにもならず彼等のような便乗者を蔓延らすことになったのは、警察の捜索が事件直後全力投球であったものが月日の経過と共に解決の道が遠くなったため事件が風化して、他にも雑多な事件が多く警察が友梨ちゃん事件ばかりに深く関われなかったため捜査員も少し宛人員を減らされ何時とはなく来署される父親の嘆願に対して満足な対応ができなかった処に、“警察にはやる気がない”とお父さんが警察不信の念を抱かれたのが発端であり、その不満を嗅ぎつけ心の隙に悪人達が忍び込んだものに違いありません。以為警察も4年もの長期間、友梨ちゃんのお父さんの苦悩と行動に全くに気付かなかった失態は赦されるものではなく、どんなことがあっても友梨ちゃんの加害者を捉まえることしか吉川さん一家に償う術(すべ)がありませんが、果たして彼等警察にそれだけの執念が残されているでしょうか。
トヨタやホンダなど日本メーカーの50%も沢山給与を取っていながらGM達の労組は09年度からの給与のカットを拒否しました。時給換算6900円と書かれていましたから一日7時間、週五日として月額100万円にもなりますから、取りすぎが業績悪化に繋がったものでしょう。何れ年が代われば民主党労組派のオバマさんが助けて呉れると謂う“読み”かと思いますが、会社が潰れてはどうにもなりません。彼等は金(メッキ?)の卵を産む鶏の首を絞めていることに気付かないとは愚かですね。
本日岐阜で行われた全日本実業団女子駅伝は常勝三井住友海上を押さえて昨年は地区予選すら突破できなかった豊田自動織機が創部2年目にして初優勝を遂げました。(^^)
此の会社はトヨタグループの総帥でありトヨタ自動車の生みの親に当たります。昨今トヨタがビッグスリーの破綻を受けて苦境に立たされていますが、若しトヨタ自動車で創部されていたら恐らく世間を慮って廃部となり出場できなかったでしょうから良かったですね。トヨタも此の優勝を契機として明るい未来を開いて頂きたいと思っております。
漢検の募集した今年の漢字は“変”に決まりました。今の総理が“変”やからでしょうね(^^)
先週の漢字の問題の解答
“てにをは”は漢字で『弖爾乎波』又は『弖爾遠波』と書きます。“て”の字は弓の下に一が付いていますが珍しい字ですね。この字は訓読みが“て”で音読みがなく国字です。漢字の“手”に値打ちを持たしてお役人がこんな字を作ったものと思われます。一は弓を番(つが)えた手を意味するのでしょう。
語源を辿れば、平安朝初期に遡りますが、漢文の訓読みで補読する文字、助詞、助動詞、用言の活用語尾などの総称であり、特に明治時代は漢字の読みを示すために字の隅などに付けた点を“をこと点”(乎古止点)と呼んで漢字の四隅にある点を左下から時計回りに呼んで行くと“てにをは”となるところから用いられています。
今週の問題
胄(よつぎ)と冑(かぶと)
上の二つの漢字、跡継ぎを意味する胄(よつぎ)と謂う字と鎧兜の冑(かぶと)と謂う字は全く同じ筆順で書き字画も書体も同じなのですが、読み方だけではなく実は全く違った字なのです。
何処が違っているのかが今週の問題です。辞書を見ずにお分かりでしょうか?