鵯

夕間暮れとでも言うのか夕暮れの薄暮どきに事務所の玄関先に立っていると物凄い数の小鳥が飛来した、そしてその極一部がうちの前の電線に止まった、そして口々に何やら囀(さえず)って居る。姿は薄ぼんやりとしか見えないが雀より少し大きく明らかに鵯(ひよどり)の声だ、塒(ねぐら)に帰る途中だと思うが、何思ってうちの前で一服したか、黄昏どきで見え難いが前の方の電線にも沢山止まっているからざっと百羽位は居る、飛んでいたのは全部で幾羽だったんだろう?、彼等が昼間はどこに居るのか考えたが検討もつかない、真っ黒の鳥だから雀と間違うことはないし、普段飛んでいる鵯はもっと大きい奴を時折見掛ける位だ、こんなに沢山の鳥から眺められるとヒッチコックの「鳥」を思い出してしまう、あれは実に怖い映画だったね。

今日も漢字の話でゴメン。世に国語辞典は十指に余り数えきれぬ位あるが、辞典には大型と中型と小型があることは御存じの通りです、大型は全巻10冊以上になるので図書館や学校以外では専門職の大学の先生だけが持ち、中型は机上版と言われて文字に携わる方などが持って居られるが結構重いので一般的にはバッグにも入るし小型の辞典が重宝される。私は此れまで中型では広辞苑と言海を用い、小さいのは新潮国語辞典(職場)と明鏡国語辞典(自宅)を使っていたが、最近になって芥川賞を受賞した赤瀬川原平が書いた「新解さんの謎」を読んで、新解さんと呼ばれる新明解国語辞典(三省堂)の大ファンとなった^^。昭和45年に第一版が発売になってブームとなったそうだが、丁度その頃の私は仕事にかまけて漢字など全く興味がなっかったから80歳になるまでどうしてこの国語辞典に巡り合わなかったと己が無知と不明が悔やまれてならない(;;)が、漢字に興味を持ったのが漢検受験の69歳と晩学だったせいで悪いのは自分だ。
此の辞書は現在第七版を迎えているが、アマゾンでは此の国語辞典は他を圧して断トツのベストセラー第一位だ。過去の発行部数を調べると広辞苑が1200万部に対し新解さんは小辞典とは言え2000万部と倍近いからビックリだ(゚Д゚)。
辞書は一般的には外部の人達にも委託して出版社の沢山の人が共同で作成するものだが、此の新明解国語辞典の初版は東大文学部国語学科卒の山田忠雄と言う先生が一人で書かれ、2版目からは知り合いの数人の学者を協力者として書かれ読み合わせをされた辞書なので、メチャ個性的であり他の辞書のように無機質で客観的に事象を説明するのでなく、野坂昭如的に物事を斜に見た胸の透く用例が使われており、一度読むと病み付きになるので驚いてしまう。又読者に対するサービス精神は抜群で、辞書を読むためには先ず漢字の読み方が分からねば話にならぬから初めに部首表があり更に部首別漢字索引が設けられているので漢字辞典を引かなくても目的地に辿り着けるように配慮されている。更に驚いたことには新解さんのファンには熟語の意味を解くのではなく此の辞書自身を読書の目的にしている方が結構多いそうだ^^。余り言葉の用例が面白いので私も新解さん第7版(第三版と第5版は古書で入手)三冊を買って初めから全部読もうとしたが、一日1ページとしても第7版だけで4年以上掛かる計算だ、確定申告が酣(たけなわ)で仕事は山ほどあるし読み終えるのに到底私の寿命の堪えるところではなく、已む無く暇を見付けてはランダムに頁を捲て読んで行こうと思って居るが読みかけると俄然興が湧いて止められないのでとても困る。

参考までに新解さんの「公僕」を読んでみよう、
「国民に奉仕する者の意としての公務員の称、但し実状は理想とは程遠い」
因みに広辞苑の「公僕」は、
「公衆に奉仕する者の意、公務員などの称」。

新解さんの「役所」
「国、地方行政事務を取り扱う所、用例として『お役所仕事』形式だけやかましく言う上に非能率的の典型と思われる仕事ぶり」
広辞苑の「役所」
「役人が公務を取り扱う所」
と前者の庶民的な痛烈な洞察力に対して後者の可笑しくも何ともない無機質な説明との段差は余りにも顕著だ。
来週は違う言葉をご紹介して皆さまのご参考にしようと思います。

北朝鮮の非道に対する我が国の制裁に対し北朝鮮が先週発表した「拉致被害者調査中止」の報復はまさに笑止千番だ。彼等は此の2年間何か少しでも調査に動いたとは全く思えない、一度の調査もせず彼等が腕を拱いて座視していたことは世界中が認めるところだ。
「調査中止」は「調査着手中止」の誤りだろうが(>_<)。

先週の読みたくても読めない字
押し合い圧(へ)し合い

今週の読みたくても読めない字
(案)で食事をする